自然環境を「体」と「街」に例えて理解する
自然界を「一つの街(システム)」に見立ててみましょう。
街はさまざまな機能を持つ建物や人々が協力して成り立っていますが、自然界も同じように、いろいろな生物や要素が複雑に関係し合っています。その仕組みをいくつかの側面から覗いてみましょう。
森林=「肺」と「インフラ整備担当」
街にある公園や並木道は、私たちが呼吸を整え、憩いの場として利用する大切な空間です。
自然界においては、” 森林が「肺」” のような役割を果たしています。森林は二酸化炭素を吸収して酸素を生み出し、大気をきれいにしてくれます。
さらに森林は、街でいうと「インフラ整備担当」のような働きも担っています。木々の根は土壌をしっかりと押さえ、水が一気に流れ出すのを防いでくれるからです。
大雨が降っても土砂崩れが起きにくく、水をゆっくり地中に染み込ませて地下水を育みます。街における排水設備や堤防のような、重要な役割を担っているわけです。
土壌=「街の地下基盤」と「大きな倉庫」
街を支える土台には、見えない部分に配管や基礎構造があり、建物や道路をしっかり支えています。自然界でこれにあたるのが「土壌(どじょう)」です。土壌の中に広がる環境を「土中環境」と言います。
土中環境内では、植物が根を張り、栄養を得る場所ですが、それだけではなく、土中の無数の微生物(菌糸)や小さな生きものたちが分解・再利用することで栄養循環を回しています。
また、土壌は「大きな倉庫」のような面もあります。例えば炭素を地中に蓄えることで、温室効果ガスを大気中に放出しないようにしてくれます。これは街でいえば、ゴミを適切に処理・保管して、街全体が快適で安全な環境を保つことに近いです。
水の循環=「街の上下水道システム」
街には飲み水を送る上水道と、汚水を回収する下水道があり、それらを処理する浄水場や下水処理場があります。これらが機能しているおかげで、街全体の衛生状態が保たれます。
自然界では、川や湖、海、大気、地下水などが互いに巡り合い、太陽の熱や地形の変化などによって水の循環が起こります。
雨となって地上に降り注いだ水は、土壌や植物によって浄化され、地下水や川を通じて再び海へ戻り、蒸発して雲を生み、また雨となります。
まさに「地球の上下水道システム」ともいえる循環で、これが停滞すると飲み水が不足したり、水質が悪化して生態系にも大きな影響が出ます。
さまざまな生物=「街の住民と職人」
街には、多種多様な人々が暮らし、それぞれが得意分野で職を持っています。同じように自然界には、植物、動物、微生物など実に多様な生きものがいて、**「街の住民や職人」**のようにそれぞれが特定の役割を果たしています。
• ハチやチョウなどの花粉媒介者
彼らはまるで「Uber Eats(ウーバーイーツ)」のように、花と花を行き来して受粉を助け、多くの植物が実を結ぶサポートをしています。
• 微生物やミミズなどの土壌生物
これらは「分解処理のエキスパート」であり、落ち葉や動物の排泄物などを分解して土壌に栄養を戻し、新しい命の育成を手伝います。
• 捕食者や被食者の関係
街中にもセキュリティや治安維持のシステムがあるように、肉食動物と草食動物の関係がバランスを取り合うことで、特定の生物が増えすぎず、生態系全体の安定が保たれています。
生態系サービス=「街の公共サービス」
街には、道路や警察、消防、図書館、公園など、私たちの生活を支えてくれる公共サービスがあります。自然界も同様に、私たちに多様な恩恵を与えてくれています。
これを**「生態系サービス」**と呼び、以下のように大きく分けられます。
1. 供給サービス(食料、水、木材などの資源)
2. 調整サービス(気候・水質・害虫の抑制など)
3. 文化サービス(レクリエーションや景観、精神的安らぎなど)
4. 基盤サービス(土壌形成や栄養循環など、他のサービスの土台)
生態系サービスが維持されることで、街=私たちの生活空間が健全に機能し、安心して暮らせるのです。
まとめ
街=地球の健康を守るために
自然環境を「街」にたとえると、それぞれのパーツ(森、土壌、水、生物など)が有機的に繋がって、全体として一つの大きなシステムを作り上げている様子がイメージしやすくなります。一つの要素に問題が生じると、他の部分にも連鎖的に影響が及び、街全体が機能不全に陥ってしまうでしょう。
プラネタリーヘルスの視点に立つと、この「街=地球」を健康な状態で保つことが、私たち自身の健康を守るうえでも欠かせません。
土壌の豊かさを保ち、生態系のバランスを乱さないようにして、水や空気、食料を安定供給できる状態を維持すること。それは、街の住民としての私たち一人ひとりが、ゴミの適切な処理や資源の節約、環境に配慮した生活を心がけることに通じます。
今後、より持続可能な未来のために、自然を「よそごと」ではなく、「暮らしを共につくる仲間」としてとらえてみるのはいかがでしょうか。
そんな意識づけが、僕たちの街=地球の健康、そして私たち自身の健康を守る大きな一歩になります。
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